吉祥寺のOUTBOUNDさんに煤竹菓子切り「ささのは」を納品しました。以前は店頭の営業に専念されていた同店は、春以降の状況下において新規に始められたオンラインでの営業にしばらく専念されていましたが、徐々に店頭での営業を再開され、2ヶ月半ぶりの実店舗での展覧会(6/26~「辻野剛+fresco展」)もはじまりました。
久しぶりにお店を訪れて、店主の小林さんやいつもお世話になっているスタッフさんとお会いできました。実際のお店での時間はやはり良いものだと改めて感じます。
煤竹の菓子切りは定番で削りつづけています。いまより多く削ることはできません。いつくかのお取扱店への納品と、個展などの際に少し展示するくらいで精一杯です。
煤竹ができるのは囲炉裏のある家で、代々の暮らしがつづいてこそ。江戸時代の人々が竹を使って家を建ててくれたお陰で、百五十年、二百年後のいま、茶杓や花入、菓子切りにと、使わせてもらうことができます。
いま青々とした竹を切って、もしそれで囲炉裏のある家を建てることができ、そこから数世代にわたって同じ場所で暮らしを継続することができたなら、五代か六代先の人類は、はじめて煤竹を手にすることができます。こうして考えてみると、奇跡のようです。
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OUTBOUNDからの帰り道に、井の頭池に立ち寄りました。かいぼり等の活動のお陰で水質が改善し、消滅したと考えられていた固有種の水草が復活したと聞いておりましたが、それを実際に目にすることができました。見たことのない植物を水中に発見し、とてもありがたい気持ちになりました。
夏になって池の水温が上がったためか、水中には藻類が発生しているものの、それでも以前に比べて池水は高い透明度になっています。近年の東京では様々な市民活動の成果もあり、自然環境の回復が各地で見られるようになりました。
大きなレベルにおいては、現代人の暮らしが、百年後、二百年後の人々にもたらす益は残念ながら少ないと想像されますが、少なくとも数十年前よりは良くなっている物事もあると思います。こうして回復した自然環境など、いまある貴重な遺産を次の世代によりよい状態で、ひとつでも多く引き継いでゆけるよう大事にしたいですね。