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十年以上、削り終えることのない茶杓

 

 

 十年以上のあいだ、削り終えることのない茶杓が手元にあります。


竹茶杓(制作中)竹工芸家 初田 徹
竹茶杓(制作中)

 たいへん美しい景色をもった真竹から削っている茶杓です。

 

 削り始めたのが正確にはいつだったのか思い出せませんが、十年以上が経過していることは確かです。素材の制約からすこし寸法の短い茶杓になっています。

 

 全体になんとも言えない褐色とグレーの中間のような色味で、表皮から竹の奥へ薄く透き通ったような肌合い。節上の樋の両側に明るい色味の胡麻が出ています。

 

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 枉げるのが難しい竹でした。なんとか枉げて削りはじめて、およそ完成に近づいたところで、自分にはまだ早い竹だったように感じはじめました。

 

 そこでいったん中断。以来、何度か手を入れつつ、ここ数年はずっと仕舞ったままだった茶杓。先日、ふと気持ちが向いて、ざくざくとやや大胆に削りました。

 

 節下のややみじかい茶杓ですが、重心のバランスは取れて、およその形は定まりました。また一休みして、焦らずに仕上げるつもりです。

 

 この茶杓には筒を添わせるのが良いでしょう。