世田谷区代田にある齋田記念館での展示『千利休をめぐる茶書の歴史 -築き上げられた茶聖像- 』を訪ねました。(7月15日までの展示です。すでに会期は終了しました)
齋田記念館は小田急線の世田谷代田駅から南へ徒歩7分ほど、環状7号線沿いの自動車の交通量の多い場所に在りながら、この記念館だけはかつてここが代田村だった頃の農村地帯の面影を残しています。
齋田家は幕末、明治初期から茶の栽培や輸出といった茶業に携わっていたそうで、茶との関わりが深く、茶に関する資料も数多く保管、1994年に齋田茶文化振興財団を設立、97年に財団の展示施設として齋田記念館を開館したとのこと。
今回の展示『千利休をめぐる茶書の歴史』では『山上宗二記』や『松屋会記』『南坊録』等の写本・版本をはじめとする29点が展示されています。
展示室は一室のみの小さな美術館で、私の他には鑑賞者の姿もほとんどなく、一人きりの時間もありました。美術館を訪ねること自体、私にとっては二年ぶりのこと。ゆっくりと静かな気分で鑑賞することができ、久しぶりの貴重な時間になりました。
旧代田村の民俗芸能「代田餅搗き」についての説明板が敷地内にあります。
代田という地名は、ダイダラボッチの足跡に由来するとも言われます。今では幹線道路に分断され、アスファルトに覆われてしまった土地の起伏をよく観察すると、確かにそれらしい窪地の名残が見てとれます。(実際にそれらしい地形を見ることができるのは、齋田記念館から数百メートル北上したあたりになります)
ふたつ上の写真、記念館左奥に見える建物は齋田家の門です。個人の住宅ですので近くから撮るのは遠慮しました。
ひとつ上の写真では敷地の目の前を環七が通っている様子が分かります。
右を向けば江戸の外に広がる武蔵野の代田村、左を向けばせわしい令和の世田谷。タイムマシンのような不思議な場所です。
空を見上げると時代も場所も一瞬どこだか分からなくなる夏の盛りに、代田の歴史散策をするのも楽しいかもしれないなと、小さな夏休みの散歩を夢想しています。