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竹組金彩茶籠 銘「丹霄」~彩鳳舞丹霄~

 

 こんにちは。あっという間に師走は半ばを過ぎて、今年の残りは十日ほどに。本日は2023年のハイライト的な作品を振り返ります。


竹組金彩茶籠 銘「丹霄」(彩鳳舞丹霄より)竹工芸家 初田徹 作
竹組金彩茶籠 銘「丹霄」

 竹組金彩茶籠 銘「丹霄」

 

 お客様よりのご注文による特注制作品です。内張の鳳凰の古裂はお客様の御所蔵品。銘もお客様より頂きました。由来は禅語の「彩鳳舞丹霄」より。

 

 細く割いた竹を網代に編んだ上から、幅広の竹で装甲をしつつ、合間に細密な編み目をよく見せて、竹の特性であるしなやかさと力強さ、相反するふたつの性質を両立すべく形づくりました。

 

 編み目はごく濃いめに、要所の部材は煤竹色に染めて、拭き漆で仕上げると同時に金彩を施しています。完成すぐの状態は写真のようにコントラストの高い色味ですが、細い編み目の色味が徐々に落ち着いて、もう少し渋い雰囲気になってゆく予定です。


竹組金彩茶籠 銘「丹霄」(彩鳳舞丹霄より)竹工芸家 初田徹 作

 編み目の上から幅広の部材で装飾と装甲を施す仕上げは、ここ十数年ほど好んで続けてきたもの。茶籠のほかにも酒器を収める酒籠や、用途を限らない小筐なども作ってきました。

 

 籠の曲線に合わせて、一本ずつ火の熱で曲げます。曲げては合わせて微調整する繰り返しですが、あまり何度も熱を加えると竹が脆くなりますので、集中して。籠の箇所、それぞれに竹を使い分けて、竹の個性を生かしています。


竹組金彩茶籠 銘「丹霄」(彩鳳舞丹霄より)竹工芸家 初田徹 作

 茶籠としては大ぶりの籠です。とはいえ裂の鳳凰を端から端まで収めるにはギリギリの大きさで、貴重な裂を無駄にしないよう慎重に位置を検討して張りました。鳳凰らしく雄大になるよう。


竹組金彩茶籠 銘「丹霄」(彩鳳舞丹霄より)竹工芸家 初田徹 作

 装飾と装甲というシリーズとしては、これまでに竹籠の全面を隙間なく装甲した筐も幾つか制作し、東日本伝統工芸展に入選した作品もありました。それらの制作においても苦心をした記憶がありますが、正直なところ、今回の制作にはそれ以上の苦労がありました。それゆえに完成のよろこびと安堵はひとしお。

 

 制作においては、あくまで繊細でありながら強度をもたせること、それでいて猛々しくならぬよう、お茶の道具としてのバランスを大事にしました。おおぶりの籠に強度を持たせるために細い竹ひごながらも厚めに仕立てておりますので、実はかなりの張力、反発力を内包しています。その力を押さえながら、品よく仕上がるよう。


竹組金彩茶籠 銘「丹霄」(彩鳳舞丹霄より)竹工芸家 初田徹 作

 籠は立体。図面を描いても、その通りにゆくわけではありません。平面に絵を描くことと、立体物として物理的な限界のなかで形づくることの違いを改めて実感するとともに、まとめ過ぎずに限界を攻める緊張感を思い出させてもらいました。

 

 いまだ道半ばながらも、竹工芸家を名乗っておりますからには、こういった力作をときどきはつくらねばと、気持ちのあらたまる年の瀬です。

 

 ※尚、作品は一昨年に受注をして今年完成、納品しました品です。現在は制作のご相談を停止しております。個展、または常設において作品をお求め下さいましたら幸いです。